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使用人たちが駆けつけるあいだ、月夜は泣いている兄をかわいそうに思って、なんとか怪我が痛くないようにしてあげられないかと考えた。
そういえば、ついこのあいだ使用人の誰かが指を怪我して舐めていたのを目にしたばかりだった。
傷口を舐めれば痛みがなくなる、と月夜は思った。だから光汰の腕の傷口を、月夜は舐めたのだった。
だって、大人がこうしていたから。
月夜はそれを真似ただけだった。
光汰の傷口から血が止まった。どうやら痛みも消えたようで光汰は急に笑顔になった。痛くない、と言いながら月夜に腕を振ってみせた。
それを見た月夜もうれしくなり、やはり大人たちはこうやって傷を治しているんだなと学んだ。それなのに、月夜の両親は褒めてくれるどころか、おぞましいものでも見るかのように月夜を睨みつけたのだった。
「月夜、お前は二度と外に出てはならん!」
そのときの両親の顔を月夜は忘れたことがない。
月夜はまだ4歳だった。
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