一章

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 使用人たちが駆けつけるあいだ、月夜は泣いている兄をかわいそうに思って、なんとか怪我が痛くないようにしてあげられないかと考えた。  そういえば、ついこのあいだ使用人の誰かが指を怪我して()めていたのを目にしたばかりだった。  傷口を舐めれば痛みがなくなる、と月夜は思った。だから光汰の腕の傷口を、月夜は舐めたのだった。  だって、大人がこうしていたから。  月夜はそれを真似ただけだった。  光汰の傷口から血が止まった。どうやら痛みも消えたようで光汰は急に笑顔になった。痛くない、と言いながら月夜に腕を振ってみせた。  それを見た月夜もうれしくなり、やはり大人たちはこうやって傷を治しているんだなと学んだ。それなのに、月夜の両親は褒めてくれるどころか、おぞましいものでも見るかのように月夜を睨みつけたのだった。 「月夜、お前は二度と外に出てはならん!」  そのときの両親の顔を月夜は忘れたことがない。  月夜はまだ4歳だった。
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