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父は眉を吊り上げ、母は口をへの字にしている。ふたりは月夜の言葉がにわかには信じられなかったのだろう。しばし瞠目したまま固まっていた。
やがて父が眉を吊り上げ、感情的に声を上げた。
「月夜、ふざけたことを言うんじゃないぞ」
父の怒声に月夜は少し怯えたが、震えながらどうにか声を発する。
「わ、私は本気です。もう、この家とのつながりを絶ちたいと思っています」
勇気を出して本心を告げると、やはり父が激高した。
「冗談じゃないぞ。異質なお前をここまで育ててやったんだ。恩を忘れたのか?」
「そうよ。本来あなたは生まれたときに淘汰されるべきだったのに、わたくしたちが生かしてあげたのよ。感謝すべきなのに縁を切るなんてあなたはなんて恩知らずなの?」
母の言葉が月夜の胸に針のように突き刺さる。
今まで存在を否定されるたびに死にたくなるほどつらかった。父も母もそんな月夜の心に寄り添うことなく、ただ一族の掟のために生かしただけ。
そして今はちょうどいいから利用しているだけだ。
そうやって暁未も利用するために育てたのに、思いどおりにならなかったので簡単に捨てた。
月夜は拳をぎゅっと握りしめ、両親を睨むように見据えた。
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