おりたち

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おりたち

 シワの無い制服に包まれて、桜の花びら達よ駅に吹く。所狭しと列なして、更に狭き鉄箱の中へと進んでいく。一人、また一人、駆け込んでいく。  少し寂れた、龍の背骨を思わせるホーム。おはしめすは春を敷き詰めた、夢の膨らみ。電子の汽笛が鳴り響いては、新しい学び舎へと出発の時間。  青春、そんな1ページにフト虫食い。反対のホーム、寂れたベンチにて。群から外れた一枚が肩を落としている。  お揃いの制服。シワは眉間に吸い寄せたらしい。  ベンチの端々に投げた手足。牛と喧嘩できるような筋骨隆々の図体を、さも放り捨てるかのようにもたれかかる。花粉も残らぬ春の抜け殻、何とも虚しいふんぞり返りの独り占めであった。    威嚇のごとく鳴らす鼻息、出処には随分と背高な鷲が停まる。絹果ての砂漠を思わせる、彫り深い藍黒の瞳と相まれば精悍の一言。しかし海風が磨いた浅黒肌に、黒黄の入り混じった虎の七三。常にそびゆる眉間のシワ。中々どうして、ピンと来れば110番したくなる風貌。  剃り残しのないヒゲと薄い眉毛が、細やかばかりの抵抗であった。  おおよそ選挙権すら遠い若輩が、出して良い威圧感ではない。さぞかしお巡りさんとの名刺交換が捗ることであろう。  コレは、そんな一枚のお話しである。
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