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「 小説『天使』が、今日発売されます」
ラジオのアナウンサーがいった。
「文豪・角谷才二の十年ぶりの書き下ろし長編小説です」
また、この時間か。
おれは、疲れきっていた。
どさりと崩れるように座りこんだ。
携帯電話をとりだし、上司に今日休むとつたえる。
上司は、なんだかんだ、怒っていたが、知るもんか。
今日は、一歩も部屋をでないぞ。
「小説は、明日買おう」
「ぺッ」
若い女の子が、汚いものを見たときに発するような声が聞こえた気がした。
おれは、かまわずにカーテンをあけ、晴れ晴れとした空をながめた。
今日は、いちにちフリーだ。なにをしようかと、青空を見上げながら、あれや、これやと計画をたてる愉しみに没頭した。
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