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彼に休むと伝えられた上司は激怒した。
今日は、繁忙期ではないものの仕事がたてこんでいる。
「仕事が定時までにおわらんではないか」と悪態をつき、受話器をたたきつけた。
受話器をたたきつける音と、上司のどなり声にびっくりした小心者の社員が、左手にもっていたコーヒーの缶を落とした。
そのコーヒーの缶は、すーッと転がりだし、階段をカコンカコンと音をたてながら落ち、勢いをつけながら、1階の廊下をコロコロと転がっていく。
コーヒーの缶は、いままさに、自販機にジュースの缶を補給しようとする人物の足元にたどりついた。
たくさんのジュース缶がつまった段ボールをもつ人物は、自販機のほうへと左足をふみだした。
その左足が、スチール製のコーヒーの缶にふみぬいたから、さぁ大変。
つるりとひっくりかえった人物。段ボールからは、大量のジュースの缶がこぼれおち、ガラガラと転がりだした。
ビルの扉はひらかれていた。ビルから飛びだした缶ジュースたちは、オフィス街の道路をにぎやかに転がり、そこを歩くサラリーマンたちの足をすくい、ひっくりかえした。
つるりと滑ったついでに、ブランコで遊ぶように大人たちは靴を空へ飛ばした。
男たちの黒い革靴。女性たちのパンプスが空を舞う。
オフィス街の街灯にとまっていたカラスたちが、革靴やパンプスをくわえ、空へと舞いあがっていく。
あるカラスたちがくわえた革靴の匂いが強烈だったようで、カラスたちの脳みそが破壊された。
カラスは、ちかくを飛んでいたセスナに襲いかかった。
セスナのフロントガラスを硬いクチバシで叩く。パイロットがのりこむドアのガラスをつきやぶり、操縦席に侵入しパイロットの目をついばむ。
セスナは、行動不能におちいった。
セスナは、酔っ払いのように、ふらふわと空をさまよいだした。
おれが、青空を見上げながら、今日なにをしようかと考えていると、軽快な音が聞こえてきた。
おそらく、セスナなどの軽飛行機が飛んでいる音だろう。
その音が、どんどんと近づき、おおきくなってきている。
青空に黒いハエのような点が見えた。
その黒い点は、ふらふらとしながらも、こちらに確実にちかづいてきているように見える。
セスナの回転するプロペラが見えた。
まっすぐに、おれの部屋に飛びこんでくるコースだ。
おれは、足も手も動かせなかった。ぽかーんと口をあけ、ジョバジョバと黄色いおしっこをもらした。
おれは、セスナのプロペラにきざまれ、抑えつけられ、最後にはセスナは爆発しておれを燃やしつくした。
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