新刊『天使』

3/12
前へ
/12ページ
次へ
「 小説『天使』が、今日発売されます」 ラジオのアナウンサーがいった。 「文豪・角谷才二の十年ぶりの書き下ろし長編小説です」 おれは、トラックにひかれたはずでは。 白昼夢だったのだろうか。 それにしては、痛みはあまりにも現実的すぎた。 なんにしても会社にいかなければ、「そして、会社がえりに『天使』を買おう」 おれは部屋をでて、鍵をしめ、しっかりと鍵がしまっていることを確認し駅へむかった。 カーテンはしめられ、朝だというのに薄暗い部屋のなかで、大人びた顔の天使のイラストが「けッ」と痛罵した。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加