転校生の無口な天使は、俺にだけおしゃべり

1/7
前へ
/7ページ
次へ
 転校生は、無口な美少女だった。瞬く間にクラス中を魅了して、天使というあだ名を付けられるくらいには。  俺は話しかける度胸もなく、隣の席になった天使――本名は千歳ましろという――をちらりと盗み見る。見惚れるほどの白い肌も、きゅっと上がった口角も、天使と称されるに相応しい。  幻だろうけど、白い舞っている羽まで見えてくる気がした。  誰が話しかけても、ふふっと微笑む。そんな可憐な姿に胸を撃ち抜かれたクラスメイトたちは、我先にと天使に話しかけた。それでも千歳さんはいつも曖昧に笑うだけ。無口な姿も相まって、ますます天使に見えてくる。  俺はといえば、天使みたいだと思いつつも、ひょっとしたら千歳さんはコミュニケーションが苦手なのでは? と勝手に推察していた。  そう、たまたま、帰りの駅で遭遇するまでは。 「だからさ、言ってるっしょ。大丈夫だってば」  スマホを耳に当てて話してる姿を見て、目を見開いてしまった。普通に話せる友人がいるのか。当たり前なことだが、学校とは異なる様子に気を取られてしまった。 「うん、したっけさ、何かお菓子買って送るからさ」  見つめていた俺とばっちりと目があった瞬間、千歳さんはギョッとした顔をしてスマホをぴっと押した。多分切ったんだと思うけど……
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加