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転校生は、無口な美少女だった。瞬く間にクラス中を魅了して、天使というあだ名を付けられるくらいには。
俺は話しかける度胸もなく、隣の席になった天使――本名は千歳ましろという――をちらりと盗み見る。見惚れるほどの白い肌も、きゅっと上がった口角も、天使と称されるに相応しい。
幻だろうけど、白い舞っている羽まで見えてくる気がした。
誰が話しかけても、ふふっと微笑む。そんな可憐な姿に胸を撃ち抜かれたクラスメイトたちは、我先にと天使に話しかけた。それでも千歳さんはいつも曖昧に笑うだけ。無口な姿も相まって、ますます天使に見えてくる。
俺はといえば、天使みたいだと思いつつも、ひょっとしたら千歳さんはコミュニケーションが苦手なのでは? と勝手に推察していた。
そう、たまたま、帰りの駅で遭遇するまでは。
「だからさ、言ってるっしょ。大丈夫だってば」
スマホを耳に当てて話してる姿を見て、目を見開いてしまった。普通に話せる友人がいるのか。当たり前なことだが、学校とは異なる様子に気を取られてしまった。
「うん、したっけさ、何かお菓子買って送るからさ」
見つめていた俺とばっちりと目があった瞬間、千歳さんはギョッとした顔をしてスマホをぴっと押した。多分切ったんだと思うけど……
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