転校生の無口な天使は、俺にだけおしゃべり

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「千歳さんと北見くん? 仲良かったんだ?」  何事もなく、話しかけてくる女の子に、千歳さんはふふっと曖昧に笑って口の横のホイップクリームをナプキンで拭い取った。 「たまたま、な。ってか聞こえてた?」 「話? ちょっとだけ」  方言が聞かれたと分かった瞬間、千歳さんはあの時の俺に話しかけた時と同じように両手を合わせた。 「隠してて欲しいの!」 「な、なにを?」 「千歳さん、方言で茶化されたことあるらしくて」  俺が丁寧に説明すれば、千歳さんはこくんこくんと頷く。女の子は察したようで「そっか」と頷いてから「でも可愛いのに」と告げた。 「だってさ、可愛いって言われてもさ、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだわ」  さーさー出てるぞ。俺以外にも知られてしまった残念感を押し殺す。 「私は好きだよ北海道弁」 「本当?」 「わや、とか、めんこいとか!」 「私も嫌いじゃかいけどさ……変じゃない?」 「変じゃないよ! みんな、多分聞いたらますます、好きになっちゃうよ」  俺もそう思う。つい、大きく頷いてしまっていた。知られたくないと思っていたのに。 「んでも、恥ずかしいからさ、三人だけの秘密でも良い?」  千歳さんは、しーっと唇に人差し指を当てる。まっすぐ白い指に目が釘付けになってしまった。俺と千歳さんを見比べてから同級生の女の子は「それより」と言ってからこほんと咳き込んだ。 「二人が付き合ってることの方が秘密にしなくて良いの? 北見くん刺されるんじゃない?」 「そう思う? って、ちげーよ付き合ってないよ」 「付き合ってない! たださ、カフェとかに連れてきてもらってるだけでさ、そういうのじゃないからさ」  慌てて両手を振る千歳さんに、ふーんとニヤニヤし始める同級生。そこまで必死に否定しなくても良いんじゃないかと、肩を落とす。 「そっかそっか。でも、まぁ、邪魔してごめんね」 「なんもなんも!」 「その、なんもも、可愛いよ!」  わざわざ言葉にしてから、バイバイと手を振って去っていく。俺の店のチョイスが悪かったと思いながら、黙り込んだ千歳さんを見つめる。
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