白夜の中のわざわい

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 俺、ベシアと仲間のスケーイトは一緒に月の砂漠を旅をしていた。  今回は、セロテ砂漠をただ北へとラクダ揺られて進んでいく、ただ時間だけがかかる旅の様だ。 「今回の禍には、いつ着くんだ。このままでは干物になっちまう」 「それは、わからないだが、神はこちらを指示している」  俺達はこの案内をしてくれる素敵な神様を()っている。教会に飼われてい狩猟(しゅりょう)犬で、スケーイトはトリュフを発見する豚よろしく、わざわいを発見し倒す役目を担い、俺はボディーガードで人間の殺害担当。  そんなわけで魔術に長けているスケーイトは、一般的な魔術師の黒い長髪で、やけに背が高い、細いという姿だ。教会が、スケーイトの村を抑え込んで魔術師を飼育していると言う噂もあるが、深く知ると死ぬやつなのあえて聞かない様にしている。  おれは孤児院で、飼育されて教会に助け出されって事になっている。ありがたいねぇ。  砂漠をただラクダが歩いて行くと、一瞬、視界がゆがめられた。  後ろを向くと、白夜がどこまでも続いている。  しかし目の前は、白夜の下の村がある。 「ついたぞ」 「これはまずいな……」 「何が、まずいんだ?」 「まぁ……いろいろとね」    何時間ぶりかにラクダから降りる、背伸びをするが、あっちこっちがたがただ。  こいつはラクダから降りると、砂漠の坂を少しくだって干しレンガで作られた家々を目指して進んで行く。 「まず、教会へ行くか」 「そうだね、一度調査が必要のようだ」  それにしても町から出て一日ろくな物食ってないから、何かめしでも出してくれねぇかな?  そんな事を話ていると教会は、すぐ見つかった。独特のシンボルマークが、村のどこからでもわかる。スケーイトが、指さした場所まで無言で歩いた。  スケーイトは、教会のアーチをくぐると、信心深く祈り、教会の人を導く者に近寄って話しかけている。スケーイトの他には今は信者はおらず、導く者は熱心に話を聞いてくれている様だが、だめだなあれは……。    戻って来た、スケーイトに話を聞く。 「駄目だ、彼は同じ神を信仰してはいるが、我々の事を知らず、どうやらここに流れ着いた者が作った教会のようだ。信心深いのはいい事だが、これは困ったな……」    こいつ、顔を触り自分を落ち着かせる。 「そうだな、では、これからどこで泊まるよ?」  よっぽど、何かお気に召さなかったのか、一人で何か考えている様で返事はない。 「ペシアは、白夜の街の伝説を覚えているか?」 「さぁね、知らん」 「お前は、教会でいつも何を聞いているのだ」    スケーイトの目が、怒りを含んだ炎の様に燃えている。俺は教会では、だいたい仕事の工程を考え、次、食べるめしまで決められる様な時間を大切に出来る男なのだが。 「黒魔術様が、他の信者に偽装した、敵に狙われてやしないといつも見張って聞く余裕などない。それが俺の誠実さだ」  そう言うと、目の前の長身の男は、自分の不誠実さを驚きあたふたする。 「すまなかった……。だが、生きるのに大事な話なのだ。仕事の無い時は、たまには気を抜いて聞くといい」 「いつかな、平和になったらな」 「それでいい……、私もその時は、いろいろ協力しょう」  まぁ、そんな時は、教会の汚点の俺達はいろいろやばいけどな。  今するべきはなしではない。 「白夜の街は、魔物が太陽を吸い込んでしまっている。だから白夜がはれないのだ。ここを出る為にはいろいろ手順があり、その手順が踏まねば出られない」  こいつの話は為になるが、だいたいこいつしか出来ない事を平気で織り交ぜる。だから、半分うわの空で聞いているのだが、今回は違う事に関心を持って聞いていなかった。 「おい、スケーイトこっちへ来い。おい! 話してないでちゃんと聞け!」  スケーイトを庇って、俺が女とぶつかった。  女をこいつが助け起こし、俺は一人で健気に立つと、足元に一冊の本を見つける。  仕事がら、一度ざーっと目を通すがただの白紙だ。 「あっ」  あっ? 気づくと女は、どんどん村の北だろう方向に進んで行ってしまった。 「あの女、本を忘れて行ったぞ」 「ペシア、本の中身見た?」 「むろん見たが白紙だったぞ?」 「ちょっと貸して、時々仕掛け絵本みたいな秘密の書があるんだ」  こいつは無造作に俺が差し出した本を、パラパラとめくると多くの地図のページだ出て来た。別段何かしている風ではなく普通に出てきた感じだった。 「何かおかしい、その本を貸せ」  いつもなら平気で差し出す、スケーイトがこちらに渡そうとしない。 「この本はさっき話した、この村を出る手順について書かれているんだよ。この地図の、太陽のマーク怪物を表している。出る順番は、確認しておいた方がいいから私が、この本を預かるよ」 「スケーイトお前は、今日何かおかしいその本を渡すんだ」  そう言う俺を、スケーイトは逆に落ち着かせる様に、軽く肩を叩く。 「本はただの本だよ。解読が出来るのは私だけだから、出来るだけ済ませておくよ」  そこまで、言われるとなんにも出来ねぇ。実際、本が魔物であれば拳銃では殺せないからな。  話していたら腹が最高に減る時間になり、村の飲食店へ入る。    薄く伸ばしたパンと何でもぶち込むスープはそれなりにうまかったが、もっとガッンと肉料理が食べたかった。昨日は何も獲らえられなかったらしく仕方ない。  料金を店の親父に払うと、スケーイトが、干しレンガの家々と砂漠の砂の舞う村を無言で進んでいく。    俺はそれに付き従うのみで、魔物を発見するのに俺の力は必要なかった。    干しレンガをピョンピョン跳び越えて、砂漠の山を越えて行く。  いつもならこいつは手ぐらい貸すのだが、それもない。  いつしか俺はスケーイトを、警戒して一定の距離をとる様になっていた。  俺達の進んだ先の小さな洞穴に、魔物は確かに居た。  スケーイトがゴォ――! ゴォ――! と、音をたてる火柱で、魔物を追い立てるが、肝心のとどめの場面で、うぅ……と声を出し座り込んだ。  そのせいで俺は二丁拳銃の、ありったけの弾丸を使い魔物を殺すことで、九死に一生を得た。  魔物の屍の塵カスを踏みにじり、スケーイトの庇う右手を無理やり、掲げると手の指先から紫やら茶色に変色している。  指の先には、あの本があった。  本をスケーイトの指先から力任せに、奪い取るとこいつは、今までで一番恨みがましい目で俺を見た。 「ほら、さっさと背中に乗れ」  スケーイトを乗せた背中は、熱を帯びてあつい短時間の間にここまで人間を狂わせるこの本の禍々しさは何だ?  しかしこの状態を改善出来る方法も見つからないまま、この本を焼き捨てるべきではない気がする。  村に戻って、何とか宿を借りスケーイトをベットにつかせ、こいつ自身が作った薬を聞ききながら飲ませるとやっと寝た。  本は、一応わからない場所に隠して寝た……。  しかし次の日、俺の感じていた嫌な予感の当たり、スケーイトは消え、奥に隠して置いた本は、無遠慮に裏の壁から風穴を開けられ持ち去られていたのであった。       つづく
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