どう見ても死神

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どう見ても死神

昔、僕がまだ小さな子どもだった頃、お母さんがよく絵本を読んでくれた。 特に覚えてるのは死神と天使の話だ。 悪い人が死ぬと死神が来て魂を地獄に連れてゆく、良い人のところには天使が来て天国へ連れて行ってくれる。 そして本の最後に言うんだ、(きょう)のところには必ず天使が来てくれるって。 大きくなった今ならわかる。 お母さんがこの本を読んでいたのは、きっと僕の生命がそんなに長くないからだ。 少しでも死の恐怖を和らげようとしたんだろう。 生まれつき心臓の悪い僕は、息を切らして走ったことがないどころか、学校へ通った記憶さえない。 14年と11ヶ月ちょっと、僕の記憶にある世界の殆どは病院の中だ。 しかし今、僕は歯を食いしばり全力で戦っている。 文字通り命をかけて。 しかし相手は病魔ではなく、だった。
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