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「でも、どうして死神になんか……」 「だから天使なんだってば! さっきも言ったでしょ。翼のある天使は病気が蔓延しちゃって、隔離中なの。それで人手不足なんだけど、天使のお仕事が出来る人って条件が厳しくて。だから私がスカウトされたの」 何が何やら意味がわからない。 あいらの声が頭の中を滑って、言われたことのほんの一部だけが残る。 口を開けてぽかんと呆けていたら、あいらは僕の手から大鎌を取り上げた。 「死神に見えちゃうのは困るし全然可愛くないんだけど、魂を回収するにはこの鎌とか服とか仮面が必要なんだって。鎌で紐切らなきゃ魂の回収ができないし、仮面がないとただの幽霊みたいに思われて大騒ぎされちゃうし、服がないと霊感ある人には見えちゃうらしいの」 むぅ、と真っ黒なローブを見下ろして頬を膨らませている。 僕は酸欠の金魚みたいに口を開け閉めして、どうにか声を出した。 「さ……先に死んだら……天国で待ってるんじゃなかったか?」 「そのつもりだったんだけど、天国って生まれ変わりを待つための待合所みたいなものらしくて。私たちは清めなきゃいけない記憶も罪も極端に少ないから、すぐに順番がきちゃうんだって。そしたら響ちゃんと会えなくなっちゃうから、天使のお仕事することにしたの」 えらいあっさりとなんか重要っぽいことを言ってくれる。 どう反応したら良いのかさっぱりだ。 ただ一つわかるのは、あいらも僕に会いたいと思っていてくれたって事だけ。 なんていうか、それだけで充分なのかも知れない。
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