どう見ても死神

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「ごめんなさい、ごめんなさい、大人しく死んでください!」 大変無茶苦茶なことを言いながら、そいつは僕の胴回りよりも幅広なゴツい鎌を振り上げている。 「ふっざけんな! ハイそうですかと死ぬ奴がどこに居るんだよ!?」 ぐっと力を入れて鎌の柄を押し返した。 押し問答をする僕らの足下には、今にも息絶えそうなと病室の隅で不安そうに抱き合う両親。 そして、どうにか命を繋ごうと必死で処置する医者と看護師が見えた。 「大丈夫、そこの白い紐をこの鎌でチョンと切るだけです。痛くしないからぁ!」 「いやいやいや、これ切られたら絶対地獄行き確定だろ! 今痛くなくても、その後痛いことされるじゃんか!」 どうやら今の僕は、身体から抜け出た魂らしい。 頭の先からダランとぶら下がる白っぽい紐が、足下の身体に繋がっている。 コイツはそれを切って、僕の魂を回収するつもりのようだ。 ぐぬぐぬと唸りながら僕らは結構な時間一本の大鎌を挟んで対立し続けている。 「いえいえ……宮本 響(みやもと きょう)さんは……天国行き……なんですぅ……」 先に弱ってきたのは死神の方だった。 自分で言うのもなんだけど、万年病室暮らしの僕にすら負けるなんて、あんまりにもひ弱じゃないか?
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