どう見ても死神

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「ウソつけ! 天国行きの人間のところには天使が来るもんだろ。死神が来たら地獄行きって相場が決まってるじゃないか!」 「それには……事情が……あって……ですね……」 すっかり息の上がっている死神に対して、僕の方は汗もかかなければ息も苦しくない。 肉体から解放されるっていうのはなんて楽なんだろう。 記憶のある中でこんなに思い通りに動けた事なんてないのに。 「ぅおらぁっ!」 「ああっ……!!」 気合と共に一気に踏み込んで死神から鎌を取り上げる。 見た目よりも全然軽くて、なんだかハリボテ感があった。 「返して……返してくださいぃぃ……」 大鎌を奪われた勢いで地面に引きずり倒された死神は、僕を見上げて憐れっぽい声を出す。 「返したらお前、僕のこと殺すだろ」 「イイエ……コロシマセン……」 なんてウソの下手なヤツだ。 僕は改めて死神を観察した。 黒いフードのローブっていうのか……テレビで見た修道士みたいな服を着て、腹に赤い紐のようなものを巻いている。 本体は骸骨っぽいけど、フードの中から髪の毛が見えるから、本当のところどうなってるのかよくわからない。 襟から見える首は、ハイネックのフリルドレスシャツに青いリボンまで巻いてる。 男なのか女なのか、ボイスチェンジャーみたいなくぐもった声で喋るからそれもわからない。 いや、そもそも死神に性別があるのかも疑問だけど。 「僕は死なないからな! 1ヶ月後……いや、18日後。そこまでは絶対死ねない。どうしても殺すなら、せめて天使が来てくれなきゃ困るんだ」 地獄はダメだ。 地獄なんかに行ってしまったら、きっとあいつにもう会えなくなっちゃう。
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