どう見ても死神

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「だから……私は天使なんですってば!」 もそもそと死神は服の中を探る。 えらくどんくさい動きであちこちのポケットの中を……てか、そんな幾つもポケットあるのかその服。 「ほら、よく見てください」 差し出されたIDカードみたいな物には『魂回収省 死神部所属天使』と書いてある。 「ンなもん信じられるか! 死神とも書いてあるし、何より禍々しい見た目しやがって。信じてほしけりゃ白い羽根でも見せてみろ!」 「いや、数年前まではちゃんと白い翼の天使が回収してたんですけど、黒翼病(こくよくびょう)っていう病気が天界に蔓延しちゃったんです。いわゆる『破滅の天使』事件ってやつで……そのせいで今、翼のある天使は隔離中なんですよ。代わりに私たち、死神部所属の天使が回収業務を担当してます」 それを言うなら『天使の破滅』なんじゃなかろうか。 疑わしいところばかりだ。 「響さんてば、怪しんでますね? でもイスラム教にはアズライールっていう死を司る大天使がいて、死神みたいな姿で描かれたりするんですよ。この姿も決しておかしいものじゃアリマセン」 僕はまじまじと死神を見詰めた。 急に賢そうな事を言い出す割に、どこかで憶えたばかりの付け焼き刃の知識を持ち出したような棒読み感がある。 しかし骸骨顔ではどこを見てるのかさえ判別出来ず、嘘をついてるかどうかなんかわからない。 すると死神がなにやら体をクネクネさせ始めた。 「見つめちゃいやん♡」 「恥じらうなよ、気色悪い……」 もうどこからツッコむべきかわからない。 このふざけた死神はそーっと大鎌に手を伸ばしながら訊ねる。 「天国に行きたいのはよくわかったんですけど、18日後ってのは何ですか?」 「僕の……僕たちの15歳の誕生日。あいつと約束したんだ」 死神から鎌を遠ざけながら、僕は約束を交わした相手に思いを馳せた。
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