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「その人はどうなったんですか?」
黙って聞いていた死神は、無表情の髑髏顔をこてんと傾げた。
「1年前、アメリカに心臓移植の手術を受けに行った。ずっと探してたドナーが見つかって、渡米費用が用意できて。その時に約束したんだ、1年後の僕らの誕生日にもう一度会おうって。もしどっちかが先に逝ってしまっても、必ず天国で会おうって」
僕だって地獄に行くような悪いことをした覚えはないけど、あのあいらがそんなところに行くなんてありえない。
だから死神に地獄へ連れて行かれるわけにはいかないんだ。
「でも……おかしいですね。手術から1年も経ったなら、約束よりも前にお見舞いに来てくれても良いんじゃないですか?」
「……あいらは僕よりも弱っちかったから、きっと元気になるのに時間がかかってるんだ」
マヌケな死神のくせに、痛いところを突いてくる。
通常の心臓移植は術後ひと月ぐらいで退院できるらしい。
海外での移植となると身内の滞在費用もあるから、出来る限り早く帰国するとも聞いている。
疑問がなかったわけじゃない。
僕は大鎌を持つ手にぎゅっと力を入れて、俯く。
足下では僕の命を助けようと、看護師さんたちが忙しなく飛び回っていた。
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