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堕天使の困惑
その堕天使は、心底困っていた。自分のみに何が起こっているのか、自分自身の事なのに全くもって理解することが出来なかったのだ。
「マスター、あんたの豊富な知識でオレのこの状況をなんとかしてくれ」
堕天使は、元天使で齢六千年のこの喫茶ハネヤスメのマスタに自分の身の上に起こっている事を話し始めた。
***
その村では、堕天使が現れると噂が立つ度に、人々はざわめき、不安そうに互いの顔を見合わせる。今回も例外ではなかった。ある夜、村の小さな広場で奇妙な風が吹き、枯れた草木が一夜にして花を咲かせるという「奇跡」が起こった。堕天使の仕業だと噂は広まり、村の人々はそれを「不気味な兆し」として警戒する。
「またか…。堕天使め。」
誰かが吐き捨てるように言うと、それが合図のように、村中が厳しい目を堕天使に向けるようになった。
しかし、その夜の「奇跡」に心を奪われた者もいた。目の見えない少女が、噂に耳を傾けてヨタヨタとその広場まで歩いてきた。
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