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「この香りは・・・。」
少女はその場に立ち止まり、目に涙を溜めながら呟いた。
***
少女にとって、その広場は特別な場所だった。幼い頃、まだ両親が健在だった頃、よくこの場所で遊んだり、絵本を読んでもらったりした思い出があった。広場の真ん中には、古びたベンチがひっそりと佇み、春になるとその周りには色とりどりの花が咲き誇っていた。暖かな日差しの下、父親はベンチに腰掛けて娘を膝に乗せ、優しい声で絵本を読み聞かせてくれた。物語の中の動物たちが冒険する度に、少女は笑い、母親は花を摘んで少女の髪に飾り付けた。
「今日はどんなお花を見つけたの?」と聞かれると、少女は手にした小さな花束を誇らしげに差し出し、「この花、いい匂いがするんだよ」と答えていた。両親はその度に微笑んで、「素敵ね、花も君が選んでくれて喜んでいるよ」と優しく言ってくれた。その言葉を聞くと、少女はますます花の香りを吸い込んで、幸せそうな顔をしていた。
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