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「そうなんですよね」と答え、マスターの差し出した水をクイッと飲み干し、腰を上げた。
「ありがとう、マスター。やっぱり、こうして話すと少し楽になるよ。」
「それじゃ行ってきますか。マスターごちそうさまでした。」
天使たちは店を後にする。店の扉が静かに開き、彼らの白い羽が微かに揺れる。そして、暗闇の向こうへとその姿が消えていく。
「お気をつけて。またいつでも話に来てください。」
天使たちの背中に、そう言葉をかけたマスターの表情は、穏やかでありながらもどこか哀愁を帯びていた。彼の背中にも大きな羽があり、それがかすかに光を受けて輝いている。そして、その羽の影には、長い時の流れが刻まれているようだった。
「まったく…人間も、天使も、皆同じだね。」
マスターは、出ていく二人の背中をどこか懐かしそうな顔で見送りながら、静かに珈琲のカップを片付けた。その手元はどこか優雅で、慎重で、まるでその一杯に長い時を注ぎ込んでいるかのようだった。
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