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「っ、ぉ、」
「今まで我慢していた快楽が全て爆発します! ペニスも乳首も口の中も、あなたの性感帯は絶頂するためだけの器官になりました!」
絶頂を畳みかけるように、夜伽光が言う。
「ぁ゙ッ゙、――――――~~~ッ!!」
限界を超えるほどに膨らませられた風船を針でつつくように、あっけなく崎山は絶頂を迎える。
精液が勢いよく尿管を通っていくのも、まだ『夜伽光』が性感帯を責める感覚が続いているのも、崎山の絶頂を終わらせてくれない。
もう、なにも考えられなかった。
「あなたをたくさん気持ちよくしてくれたとろとろの中に、パンパンの睾丸の中の精液、全部ぶちまけてください! ほら、ほら、ほらほらほら! 何度でもイッていいんですよ! イくのを我慢する必要はありません!」
「ぁっあああ゙あ゙ぁぁ゙ぁぁあ゙あ゙あ、あ゙あ゙あっあッ゙あっ、あ゙ッ、は、はひ、はへぇ゙ぇ゙え゙えッ!!」
「腰へこへこさせるのもザーメンもイキ狂うのも止まらない! 頭の中はイくことだけしか考えられない! ほら、イけ、イけイけイけイけ!」
興奮を最早隠しきれないような声で何度も絶頂を命令され、崎山は今までにない強烈な絶頂を何度も味わう。
催眠によって鈍化させられているはずの思考を、さらに真っ白に塗りつぶされていく。
絶頂、歓喜、法悦、多幸感。
それでも、射精による絶頂はいつしか終わりが来る。
「え゙っへ、あ゙っぁ゙あへ、へぁ゙あ゙ぁぁッ、あ゙ッ、っあ゙ーあーあー、あ――――~……、あー……、……あー……」
大きな大きな波が引いていくような感覚とともに、崎山はぐったりとベッドに沈んだ。
全力で何百メートルも走ったあとのような、荒々しく乱れた呼吸を繰り返す。酸素が欲しい。
暗転しそうな意識の外で、小さい咳払いのような音が聞こえた。
「……お疲れ様でした。それでは、これから催眠を解除していきます」
夜伽光の声は、元の穏やかな、無機質なものに戻っていた。
(……ああ、終わるのか……)
絶頂地獄を味わわされていた時は早く終わって欲しいと思っていたのに、いざ終わりの時がくると何故か名残惜しさすら感じていた。
「まずは、上げていた感度を下げていきます。10から0まで数えると、あなたの感度は全て元通りになっていきます。10、とろとろがあなたの体から離れていきます」
その声と同時に、意識下の無数の夜伽光が元の『とろとろ』に姿を変え、離れていく。
(……、あ……)
離れてほしくないと思ってしまった。
もっと、側にいて、自分を愛してほしいとすら願ってしまった。
「……0。はい、あなたの体は普段通りの状態になりました」
その思いと裏腹にカウントは終わる。
崎山の感覚は通常レベルへと戻っていた。
「次に、今回あなたにかけた暗示を解いていきます。まずはぼーっとしていた意識がはっきりしてきます」
暗示を解く度に音を鳴らされる。一つ一つ、意識や体の感覚が戻っていく。
そうして、暗示は全て解除された。
「……はい、全ての暗示がなくなりました。お疲れ様でした」
目を開ける。ベッドの側には、天井の方を仰ぎ見ながら、ライトのリモコンで明かりを付ける夜伽光――光貴の姿があった。
光貴はライトを付け終わると、彼の方に向き直る。何故か白衣を閉じていた。
「……おはようございます、崎山さん」
「……ああ……」
崎山は起き上がる。体力を大分削られたような気がしてかったるい。
そして、おむつの中が湿っている……いや、盛大に濡れている。
視認しなければ分からないが、恐らく家での催眠オナニーのとき以上に液体が垂れ流しになっていたのではないか、と射精後の冷静になった頭を抱える。
ため息をついた彼に、光貴が首を傾げた。
「……どうされました?」
「……いや……」
まさか介護用おむつはこういう奴のためか、と思った。
口が裂けても言うつもりはないが。
「ご気分はいかがですか?」
光貴が訊ねてきた。
興奮は大分収まったとは思うのだが、まだ全身のほてりは抜けきらない。
大きな呼吸をしてから答える。
「……良かっ、た」
そう、本当に気持ち良かったのだ。
今でも気を抜いたら、催眠中の感覚が戻ってしまいそうになるほどには。
家でのオナニーではこうはならなかった。
やはり、本人が目の前にいるのが大きいのだろうか。
ここは不思議な香りがするし、何かリラックス効果のあるアロマでも炊いているのかもしれないが。
「……それは良かったです。……まだ少しぼんやりなさっているみたいなので、ちょっと背伸びなどをしてみるとすっきりするかもしれません」
言われ、崎山はベッドの淵から床に足を下ろす。それから両手を振り始めた。
確かに終わった後なのに、意識をこちらに戻しきれていなかったかもしれない。
仕上げに背伸びをしていると、光貴が再びドアを手で示す。
「レストルームでシャワーと着替えをお済ませください。その後、今回に関しての簡単なヒアリングを行います」
光貴はにこやかに案内する。
頷いて崎山は立ち上がった。
早く汗と精液を流し、おむつとおさらばしたかった。
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