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レストルームの扉の向こうに崎山が入り、ドアが閉まる。
瞬間、ぶわっ、と冷や汗とも脂汗とも分からない汗が背中に噴き出した。
(……俺は、俺はクライエントに、いや充なんだけど、クライエント相手に……ッ!!)
ふらふらとソファーに向かい、ぐったりと座り込む。両手で顔を覆い項垂れた。
幼い頃からの初恋を引きずり暖めすぎて、発酵を通り越して半ば腐敗しているのではと思うほどに、彼への思いをこじらせている自信はある。
だが、助けを求め予約してきたクライエントの乱れる姿に対して、はっきりと欲情したのは今までなかった。
催眠に入ったときの、穏やかな寝顔は昔から変わっていなかった。
快楽を堪えきれずに漏れる喘ぎの、なんと甘やかで淫らで、常の面影を感じさせなかったことか。
それに乗せられるように絶頂誘発の時、多少個人的な淫欲を言葉と声音に乗せてしまったのは否定できない。
そもそも、クライエントでなくとも、生きづらさを抱えている崎山に対して、それに直結するような劣情をぶつけること自体が間違いなのだ。
彼の身に起こった事件を知っている身であるのに。
「……俺は……、本当、最低だな……」
ぽつりと呟く。
そのとき、微かに扉の向こうからシャワーの水音が聞こえてきた。
それにも崎山の裸体を妄想してしまう。
自覚後、光貴は速やかに自らの頬を張った。
「何考えてんだ俺は!!」
崎山にはどうせ聞こえないだろう、と、とうとう光貴は心の声を直接声帯から発してしまう。
「………………はぁ……」
重苦しいため息をつく。
白衣の前を閉じていた理由である、光貴の雄の象徴はいつの間にやら萎えていた。
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