Case.3 痩せ馬の声おどし

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光貴に手を取られて店内を移動しながら、そんなことをつらつら考える。いつの間にか店舗を出ていたようだった。 店の外には、まりあと綾人、そして渡辺もいた。 「はい先生、お荷物」 「ありがとう、まりあさん」 「もう支払いしときましたから」 「うん、綾人くんもありがとうね。……よく見つけてくれたよ」 「やめてください、たまたま小便したかっただけなんで」 「ちょっと綾人ちゃん。外で下品な言葉遣いしないでちょうだい」 いつもの調子で会話をしている【夜伽ヒプノセラピー】チーム。 いたたまれずに視界を巡らせていると、乗用車のタイヤが見えた。 「……車?」 ぼんやりと考えていたため、どこかおぼつかない発声で呟く。 あぁ、とまりあが声を上げた。 「もうお帰りになりたいでしょうから、私が先に呼んでおいたんです。今日はゆっくりお休みになられてください、崎山様」 言われ、視線を彼女に向ける。 何度か通ううちに、彼女や綾人とも幾度か顔を合わせるようになってはいた。 予約時間よりも早く着いてしまったときなど、彼女が応対してくれたこともあったのだ。 だから、今の発言は本当に自分を気遣って言ってくれたのだと、二心を疑うことはしないようにした。 案じているような表情で見てくる彼女に、崎山は軽く会釈する。顔を上げると、彼女は微笑みを返していた。 そのとき、おずおずと誰かが声を上げる。 「あ、あの……先輩の荷物……」 その声の主、西村は、ビジネスバッグとコートを持ってきていた。光貴が黙ってそれらを受け取る。 「はい、みーくんの荷物取ってきてもらったんだ」 「あ、ああ……」 荷物を手渡され、優しげだがどこか有無を言わさぬ流れでタクシーに乗せられる崎山。 未だ被りっぱなしの光貴のコートの隙間から、彼が西村に向かって歩いていく光景を眺める。
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