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コーヒーメーカーがこぽこぽと音を立てている。香り高い馨しい匂いが浮遊していた。
私は煙草に火を点け昨晩の金額が正しく存在するかどうかを確認していく。客は上客ばかりであり、そんなせこいことをする人間はいない。いれば出禁である。
テーブルの上に使用済みの注射器、数えられた紙幣、そして優雅な曲線を持つコーヒーカップが置かれている。
かたり、バスルームが音を立てたことで私は椅子から腰を上げた。落ち終わったコーヒーサーバーを持ち、コーヒーカップに注ぐ。注ぎ終わった瞬間にライアンが顔を出す。ジーンズに纏わせたベルトのバックルを弄りながらの登場だ。
「稼ぐねぇ」
「お互いにね」
札束を見たライアンがそう呟くから、私も同じことを返す。バスルームにいる女性が彼の顧客であることは明白だ。タトゥーが施された指先が私の金を一枚摘む。そしてそれを宙に浮かせて光に翳す。
「本物か、面白くねぇ」
「……私に偽物渡したら私抱けなくなるでしょ」
「いいよな、おまえは金持ち相手にするから。こっちはジャンキー。まじ小賢しいからね、あいつら」
けたけた笑うライアンは腕を伸ばし、コーヒーカップを乱暴に持ち上げる。その瞬間に見える腕を覆うタトゥー。びっしりと沢山の絵柄が描かれている。ライアンは全身にタトゥーを背負い込んでいた。
「ストリッパーのほうは?」
「……まぁまぁかな。ジャンキー相手にするよりウブな女の子をステージに上げて辱めるほうが楽だな。今夜観にくるか?」
「あー、ジョシュのファイトが重なってて、迷ってる」
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