儀式

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「待て、空木殿!」 アーヒルの匂いに吸い寄せられるように、僕はアーヒルの静止を聞かずに抱き着いて、耳元に鼻を寄せてアーヒルから発する甘い良い香りを吸い込んだ。 「空木殿!」 肩を掴まれ引き剥がされても、この匂いをもっと嗅いでいたい衝動を抑えられない。 目を見開き、アーヒルが僕を凝視している。 アーヒルが動揺すればする程、匂いが強く濃くなって行く。 「アーヒル……アーヒル……」 「空木殿、匂いが……」 今、この部屋には僕の匂いとアーヒルの匂いで充満しているに違いない。 もし、アーヒルが嗅いでいる僕の匂いが同じものなら、この匂いは人の理性を溶かしてしまうものだろう。 「空木……殿、匂いを止めてくれないと……これ以上は理性が……」 「アーヒル……我慢しないで抱いて……」 僕の言葉に、アーヒルが目を見開くと 「その言葉、後で『やっぱり無し』は効きませんからね」 そう言って、アーヒルに抱き着いている僕の腰を抱き寄せて押し倒した。 匂いに当てられた僕は、今度は求めるようにアーヒルと唇を重ねる。 先程の受け身の時とは違う快楽が、腰から全身に駆け抜けて行く。 キスの間、アーヒルの大きな手がガウンの紐を解いて胸と内腿を撫でる。 ブルリと快楽に身体を震わせ仰け反ると、食らいつくようなキスに目眩がした。 僕もアーヒルのガウンの紐に手を伸ばし、紐を解いて両手をアーヒルのガウンの肩口に入れてガウンを脱がせると、アーヒルの逞しい肉体が顕になった。 先程までは、凶器にしか見えなかったアーヒルの中心にそびえ立つアーヒル自身を、キスをしながら手を這わせて扱いた。 するとアーヒルの手が僕の手に重なり、熱くなった僕自身を重ねてアーヒルの手と僕の手で扱き始めた。 「んぅ……んっ……んっ……」 舌を絡め取られ、互いの熱を扱き合う行為に羞恥より興奮していた。 「リン……リン……」 切なそうに喘ぐように囁くアーヒルの声に呼応するかのように、僕じゃない誰かが僕の中に入り込んだ感覚になった。 『お願い! 僕に身体を貸して!』 悲鳴に似た叫び声に思わず意識を向けた瞬間、僕の意識はブラックアウトした。
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