儀式

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朝、目覚めると、僕はアーヒルの腕の中で眠っていた。 ……しかも、全裸だ。 肌には、昨夜の名残りの跡が……。 びっくりして飛び起きようとして、足が……下半身が……臀に……臀に違和感。 しかも、ドロリとしたモノが太腿を伝って来て 「ぎゃー!」 悲鳴を上げた僕に、アーヒルが飛び起きた。 「リン、どうした?」 「お前、お前……最後までしないって……」 半泣きしている僕に 「え?……空木殿? ……という事は、昨晩夢の中で俺が抱いたのは……」 アーヒルはそう呟くと、顔面蒼白になり 「すまない! 昨晩、リンが空木殿に乗り移っていたらしく……求められて我慢が出来なかった」 頭をベッドに擦り付けて土下座している。 「僕の身体なのに!」 「本当に申し訳無い!」 「しかも、なんで下半身がこんなに……」 「意識がリンだったので、てっきり後半は夢なのだと思っていたから……」 「思っていたから?」 睨み付けた僕に、ベッドに頭を擦り付けたままの姿で 「明け方まで抱き潰しました!」 アーヒルの言葉に、僕は失神しそうになった。 「僕、初めてなの知っているよね?」 「それが……、リンはめちゃくちゃ感じていて……」 「ギャー! それ以上、言うな! 聞きたくない!」 耳を塞ぎ叫ぶ僕に 「本当に申し訳無い」 アーヒルはひたすら謝罪していた。 でも、もしかしたらこの世界のリンは、僕を通してアーヒルと触れ合えるのではないか? と考えた。 「ねぇ、それでこの世界の僕は、何かアーヒルに言い残したりしていないの?」 と聞くと 「それが……、どうやらリンの遺体は神殿に安置されているそうなんだ」 アーヒルは神妙な顔をして呟いた。 「じゃあ、僕が此処に居るのはまずくない?」 「いや、神殿はリンが神となって戻って来たと言っているらしい。神殿にあるのは、人間だった時のリンの姿だと信じているようだ」 「それで……遺体のリンを安置って、何してるわけ?」 聞くのが怖いけど、神殿でヤバい奴を知っておく必要がある。 今の僕にも、接触して来る可能性が無い訳じゃないのだから……。 すると、アーヒルは深い溜息を吐いてから 「神官長は、リンに異常に執着していたんだ」 そう呟いた。 「昨夜のリンの話では、毎晩、リンの遺体にキスをしているらしい」 「えっ……遺体に?」 「遺体は逃げないからな」 その言葉に身の毛がよだつ。 「キッモ!」 思わず呟いた言葉に、アーヒルが苦笑いを浮かべた。 「リンは……選ばれた存在だったからな……。みんな匂いだけでは無く、力が欲しいのもあって、リンを欲したんだ」 ポツリと呟いたアーヒルに 「力って何?」 と聞くと、頭を抱えて 「空木殿は、本当に何も知らないのですね」 『はぁ……』と深い溜め息を付かれて言われてしまった。
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