儀式

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「空木殿を抱いてしまったのは、大変申し訳ないと思っている」 おおきな犬が怒られてションボリしているように見えて、なんだか可愛い。 「それで……この世界の僕は、僕に乗り移って何だって? ヤリにだけ来た訳じゃないだろう?」 半ば呆れながら呟くと 「空木殿の力が……かなり強いから、他の人に渡してはダメだと言っていた」 チラチラと僕の顔を見ながら、しょんぼりとした顔で答えた。 「僕の力?」 「そうだ。リンは転生者だと言っていたが、君たちには創造神様から偉大なる力を与えられているのだ」 「はぁ……」 「……分かっていないようだな。俺が魔力を使えるのは知っているな?」 突然質問されて、『知るか!』と言いそうになり、そう言えば僕はアーヒルに助けられたのだと思い出した。 すると 「空木殿を助けた時に使った力は、リンから授けられたものなんだ」 そう言って、アーヒルが悲しそうに微笑んだ。 「え?」 「俺自身、確かに魔力は持っていたが、あんな風に風を自在に操ったりは出来なかった。それに、俺は元々火魔法が得意だったからな」 アーヒルの言葉に 「今は?」 と聞くと、首を傾げて考えてから 「全属性を使えるなぁ~」 そう答えて苦笑いを浮かべた。 「全属性……」 「そうだ。空木殿には、人に魔力を与える事が出来る力があるんだよ」 「じゃあ、僕も使えるの?」 異世界モノによくある、チートスキルってヤツだろうとワクワクしていると 「リンは『転生者』だと言っていたが、人に付与は出来ても、自分で使う力は無かったな……。空木殿は、どうだろう?」 首を捻られてしまい、頬を膨らませる。 「与えるだけで使えないって、それって狡くない? 僕だって、魔法を使いたいのに!」 頬を膨らませて呟く僕に、アーヒルは苦笑いを浮かべると 「試してみたらどうだ? 案外、空木殿は使えるかもしれないぞ」 そう呟いた。 恐らく、アーヒルも僕には何の力も無いと思っていたのだろう。 右手を窓の外に向け 「ウォーターボール」 と、アニメで見た真似事をしてみた。 すると、めちゃくちゃデカイ水の玉が窓から外へと凄い勢いで飛んで行った。 そして途中の障害物に当たり、『ドカっ』と塊が当たる音と共に水飛沫が辺り一面に降り注いだ。 その威力に、アーヒルがあんぐりと口を開いている。 「わ……わぁ~。虹が綺麗だなぁ~」 砂漠に降り注ぐ水飛沫に、虹が架かっているので、苦笑いして呟くと 「空木殿! それ、他の奴の前でやってはダメだ!」 僕の肩を掴み、アーヒルが真顔で呟いた。 すると部屋の外がバタバタし始め 「アーヒル様、今、水の塊が!」 と、護衛兵が現れたのだ。 僕とアーヒルは顔を見合わせた後 「すまない。リンから再び力を授かり、試し打ちしてしまった」 アーヒルがそう答える。
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