目覚めたら夢……であって欲しかった

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目覚めたら夢……であって欲しかった

「鈴音、起きて」 眩しい朝日の中、逆光で顔が見えないが彼女の声に目を擦る。 「私、会議があるから先に会社に行くね。ご飯、テーブルに用意してあるからね」 彼女の声に、僕は頷きながら 「あれ? 今までの事は夢?」 ポツリと呟くと 「リン、目覚めたのか?」 彼女の声では無く、聞き慣れない男の低音でやたらイケボな声に目が覚めた。 広いベッドの中で、僕はシルクのガウンを着た男の腕の中で眠っていたらしい。 「ぎ……ぎゃあああ!!」 思わず叫んで、ベッドから転がり落ちそうになる。 するとそいつが素早く僕を抱き留め 「リン、大丈夫か?」 心配そうに見下ろす黄金の瞳に声を失う。 綺麗に整った顔立ちと、ガウンのはだけた部分から覗く逞しく鍛え抜かれた胸元と割れた腹筋。 僕がなりたかった、美しい男性の肉体美を持ったそいつに思わず見蕩れてしまい、ハッと我に返った。 「な……何で一緒に寝ているんだよ」 慌ててソイツから離れると、まず、自分の服装を確認した。 コイツと同じガウンを着ていて 「ぬ……脱がせたのか! 変態!」 思わず叫んだ僕に 「空から降ってきたから、怪我が無いのかを確認したかったし、着ていた衣服がシワにならないようにしただけだ。手は出していない」 両手を上げて言うと、ソイツは僕をジッと見つめてから 「お前は、リンで間違いないのか?」 まるで射抜くような鋭い視線で僕を見つめた。 僕はその鋭い視線に息を飲んだ後、覚悟を決めて 「僕の名前は空木鈴音だ。でも、きみの知っている空木鈴音とは別人だ」 そう告げた。 ソイツは黙って僕を見つめた後 「何故、リンと同じ名前に顔、声をしている?」 と聞くと、僕の頬にそっと触れて切なそうに瞳を揺らした。 「信じて貰えないと思うが……」 僕はソイツに、此処に来た経緯と何故、同じ名前と同じ顔と声なのかをソイツに話して聞かせた。 絶対に信じて貰えない話だと思ったが、僕の話を真剣に聞いて相槌を打つソイツしか、今、この世界で僕を助けてくれる人物がいないと思ったから、駄目もとで此処に来た経緯を話した。 ソイツは僕の話を一通り聞き終わると、口元に手を当てて 「成程……。空木殿は、創造神様の兄君ということなのだな」 なんとか納得する答えを出しているらしく、そう呟くと 「リンとは……別人という事は理解した」 と続けたのだ。 「え? 僕の話を信じてくれるの?」 驚く僕に 「ガウンに着替えさせる時に、悪いとは思ったが空木殿の身体を確認させてもらった。その時、リンには無い場所にホクロがあった。それに、きみはその……処女だろう?」 そう呟かれ、僕は慌ててお尻に手を当てて 「見たのか!」 と叫んだ。 「申し訳無いと思ったが、きみの身体を全て確認させてもらった。見える場所はリンと同じだが、いわゆる隠れている部分はリンと違う部分が幾つかあったので……」 ソイツの言葉に、羞恥で顔が熱くなっていく。 (……という事は、隅々まで見られたって事かよ!) 思わず枕を掴み、ソイツに投げ付けると 「申し訳無い。リンが死んでから、リンの姿を模して何人も刺客を送られて来たので、確かめねばならなかったのだ」 投げ付けた枕をいとも簡単に避けて、深々と頭を下げた。 「刺客って……」 「こう見えても、俺は一国の王だからな。命は狙われ続けるのだよ」 サラりと怖い事を言うソイツに、僕はとんでもない世界に来てしまった事に気付いた。
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