1ここは悪夢の世界

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1ここは悪夢の世界

 「やめてくださいお義理父様!ここは王宮なんです。そんな不適切な行動は慎んでください!」  そう言ったのはミモザだった。  今目の前にいるのは彼女の夫の父クリストだ。  ミモザの職場は王宮内の政務棟にある宰相執務室で王宮の二階に部屋がある。  学院をトップクラスの成績でで卒業して政務院で働き始めて3年になる。  あんなに苦労して勉強した知識はほとんど活かされる事なくもっぱらの仕事は書類の仕上げや整理だった。  ミモザの配属は宰相の執務室。彼女の肩書は政務補助員にだった。  そして最悪な宰相の名前はクリスト。ミモザの愚夫ライオスの父でもあった。  ミモザは1年前にライオスと結婚した。  思えばそれが悪夢の始まりだった。  彼は悪びれる様子もなくさらにミモザに近づきながら言う。  「いいではないか。こういっては何だが、私たちは親子であって親子ではない特別な関係ではないか!」  宰相のクリストは薄い唇にいやらしい笑みを浮かべる。  ここは王宮内にある政務棟。いくら宰相の執務室とはいえ扉の向こうにはたくさんの人がいることは誰にでもわかる。
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