あーあ。それ、壊しちゃったんだ? 可哀想に。もう助からないよ、君ら。

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「ああ」 ごくりと鈴木が音を立てて唾を飲み込む。 「せーのでやるからな」 「わかった」 僕も頷き、ふたりと同じように蹴りを入れる体勢を整える。 「せーの!」 鈴木の合図で、三人同時に祠へと思いっきり蹴りを入れた。 かなりぼろぼろになっていたそれは、あっけなく壊れた。 中途半端に足を上げたまま、辺りをうかがう。 しかし、なにかが起きる気配はない。 「なんだ、なにも起きないじゃないか」 「ただの噂か」 あきらかにほっとした様子で、とどめを刺すように数度、さらに佐々木と鈴木が祠を蹴った。 「あーあ」 唐突に声が聞こえてきて、ぎくりとふたりの動きが止まる。 おそるおそる振り返ると、校舎の一階の窓から知らないおじさんがけだるそうに顔を出していた。 顔を隠すようなぼさぼさの髪に黒縁眼鏡、さらに白衣を着ている。 学校にいる大人なんて基本、教師しかいないが、あんな先生はいただろうか。 「それ、壊しちゃったんだ。 可哀想に。 もう助からないよ、君ら」 けだるそうなのんびりとした声なのに、なぜか心の内が酷くざわめく。 「だ、誰だよ、おっさん!」 最初に我に返った鈴木が、おじさんに噛みついた。
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