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闇に射す光
「桜!! お前はどうしてこんなこともできないの!!」
叩かれた頬を押さえつつ、桜は「申し訳ありません」そう呟く。その瞳には何も映っていないように見える。
「お母様、お姉さまはきっと、この水が飲みたかったのよ」
クスクスと笑う妹の美鈴の顔は、これ以上楽しいことなどない、そんなふうに見えた。
桜が持っていた桶を手に取ると、それを桜の頭上からかぶせる。
「今日は湯あみをしなくてもよくなったわね」
義母の言葉に、桜はもはや何も言えず、空虚に視線を彷徨わせた。
「本当に何を考えているのかわからないところは、あの女そっくりね」
それが自分の母のことだと理解した桜は、小さい頃に優しく抱きしめてくれた母を思い出す。
『桜、どんなに辛くても人には優しいほうが自分も幸せよ』
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