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うち、来ます?
猫の名前つけるのにセンスなんぞ必要なのかと思ったが、猫の命名権がもらえる機会なんてそうそうない。
青年に洗われている猫は三毛猫みたいだ。
「じゃあ、みーちゃん…とか?」
三毛猫のみーちゃん。
そのまんますぎてセンスもくそもないが、わかりやすくていい。
青年はさっと顔を上げ、にかっと笑う。
「いい!!みーちゃん!可愛い」
その綺麗な顔で「可愛い」と言われると、なんだかつい照れてしまう。
いや、私に言ったわけではないことは重々理解している。
「俺の名前、南だから。オソロだな、みーちゃん」
ん?ミナミ?
「待って。私の名前も美波なの」
つい年甲斐もない大きな声で叫んでしまったが、青年は優しく微笑み私の顔を見つめている。
「マジすか。じゃあ、みんなでみーちゃんだ」
「ふふっ。そうだね」
「みーちゃん、ここに来て正解だったな」
にゃー。
青年は猫を洗い終えたのか、タオルで優しく猫の体を拭き始めた。
「ここに来て正解だった」
猫に向けられた言葉だけど、なぜか心がじんわりあったかくなる。
まだ水を含んだ猫の体を抱き抱えると、青年はまっすぐ私を見つめてくる。
「うち、来ます?」
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