24人が本棚に入れています
本棚に追加
近い
「麦茶とコーヒーと紅茶、どれがいいですか?」
「じゃ、じゃあコーヒーをお願いします」
私は何をしているんだろう。
明らかに年下(大学生?)の青年の家に上がり込む32歳の女。
何かの犯罪にならないだろうか…。
そんなことをぼけっと考えていると、台所から青年の声が聞こえてくる。
「コーヒーできるまで、猫をドライヤーで乾かしてくれません?」
「わ、分かりました!」
まだ水を含んで毛がパヤパヤしている猫を捕まえてた私は、洗面所だと思われるスペースに逃げ込む。
手持ち無沙汰よりも何か仕事があったほうがいい。
青年の家に妙齢の女が上がり込む理由ができた。
にゃー。
大きな目で私を見上げてくるみーちゃんに感謝しながら、ドライヤーを探す。
だか、勝手に他人の家の洗面所を探るのは気が引けて迷っていると、察したのか青年がひょこっと顔を出す。
「場所、わかる?」
「わからない」
「だよね笑」
綺麗な顔でくしゃっと笑う。
さっきよりも間近でみるその顔はより美しく、性別すら感じないほど蠱惑的だ。
青年は私の方にだんだん近づいてくる。
思わず後退りしてしまい、背後にある洗濯機まで追い詰められる。
あまりの距離の近さに心臓の音を聞かれないか、ヒヤヒヤするほどだ。
「ち、近い…」
思わずそう呟いてしまうと、青年はふっと笑う。
お互いの体が少しだけ触れる。
青年の汗の匂いが香ってくるほどに。
最初のコメントを投稿しよう!