近い

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近い

「麦茶とコーヒーと紅茶、どれがいいですか?」 「じゃ、じゃあコーヒーをお願いします」 私は何をしているんだろう。 明らかに年下(大学生?)の青年の家に上がり込む32歳の女。 何かの犯罪にならないだろうか…。 そんなことをぼけっと考えていると、台所から青年の声が聞こえてくる。 「コーヒーできるまで、猫をドライヤーで乾かしてくれません?」 「わ、分かりました!」 まだ水を含んで毛がパヤパヤしている猫を捕まえてた私は、洗面所だと思われるスペースに逃げ込む。 手持ち無沙汰よりも何か仕事があったほうがいい。 青年の家に妙齢の女が上がり込む理由ができた。 にゃー。 大きな目で私を見上げてくるみーちゃんに感謝しながら、ドライヤーを探す。 だか、勝手に他人の家の洗面所を探るのは気が引けて迷っていると、察したのか青年がひょこっと顔を出す。 「場所、わかる?」 「わからない」 「だよね笑」 綺麗な顔でくしゃっと笑う。 さっきよりも間近でみるその顔はより美しく、性別すら感じないほど蠱惑的だ。 青年は私の方にだんだん近づいてくる。 思わず後退りしてしまい、背後にある洗濯機まで追い詰められる。 あまりの距離の近さに心臓の音を聞かれないか、ヒヤヒヤするほどだ。 「ち、近い…」 思わずそう呟いてしまうと、青年はふっと笑う。 お互いの体が少しだけ触れる。 青年の汗の匂いが香ってくるほどに。
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