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ずっといなよ
私の体越しに洗濯機に手を伸ばした青年。
「ここ」
耳元で囁くように呟いた青年の声で、私はぞくっと体を震わせる。
子宮に響く声。
無意識に欲望を掻き立てられる。
そんな私の反応を愉しむかのように、青年は手に持っているドライヤーを私の顔の前で持ち上げてみせる。
「あ、ありがとうございます」
我に返った私は、ドライヤーを両手で受け取る。
耳まで赤くなっているのを感じ、青年の目は見れなかった。
「猫、乾かしたらコーヒー飲みましょう」
私の反応を知ってか知らずか、青年はそう言い残し、キッチンへ去っていった。
心臓が破裂しそうに痛い。
にゃー。
足元でみーちゃんが私の足をスリスリしている。
「ごめんね、今あったかくなるからね」
ドライヤーを弱にして、やけどしないように気をつけながら、みーちゃんの被毛を優しく乾かす。
(私、何してるんだろ)
さっきまでうとうとしていたのに、会ったばかりの隣人の部屋で、なぜ猫を乾かしているのだ。
でも、なぜか心地よかった。
キッチンからコーヒーのいい匂いが薫ってくるとともに、青年が洗面所にひょこっと顔を出す。
「俺にも貸して」
私の手からドライヤーを持ち上げ、青年は猫を優しく撫でながら風を当てる。
「ずっといなよ」
「え?」
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