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不倫女との対面
「えっ、こんな時間に?」
そう言って真史さんはリビングの置き時計にちらっと目線を向ける。
「何時だろうと構わない」
毅然とした態度を崩さない私に逃げ場がないと思ったのか、慌ててスマホを持ち、震える手でメッセージを打ちはじめた。
(土下座させてやる)
そう意気込んでいた私の野望は、見事に打ち砕かれることになるとは。
ーーその日、待てども待てども、不倫女は現れなかった。
真史さんがちゃんと不倫女に連絡を取ったのかメッセージ画面もチェックしたが、既読無視。
逃がさない。
絶対に。
翌日、スーツとフルメイクの装備で真史さんと不倫女が働く会社に乗り込んだ。
受付で真史さんの名前を出し、忘れ物を届けにきたと告げると、ご丁寧に来客会議室に案内してくれた。
真史さんを待つ間、緊張で震えがとまらなかった。
そして、孤独だった。
広い会議室にたった1人。
そして、今から会うのは敵だ。
離婚したら私の味方はもういなくなる。
無駄にだだ広いこの会議室にいる私みたいに、孤独に生きていくのだ。
ふいに泣きそうになり、バッグからハンカチを取り出そうとした瞬間、小さいノックの音がした。
姿勢を正し返事をすると、ドアが控えめに開かれる。
そこにいたのはお盆の上にお茶を載せ、にこやかに立っている真美ちゃんだった。
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