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夫には好きな人がいる
夫には好きな人がいる。
そのことに気づいたのは必然だった。
夫と同じ職場で働く総務部の真美ちゃん。
小柄で目が大きくて鼻が少し低い。
笑う時口元に手を当てて、小鳥のように高い声で大げさに笑う。
The・男が好きそうな女。
そして、私の最近仲良くなった友達…だった。
毎週日曜日、夫は教会に行く。
そこで真美ちゃんと落ち合い、2駅先にある駅前のホテルに行くのだ。
閑静な住宅街に佇む教会で、夫は静かに心から愛する人との不倫を愉しんでいた。
「離婚して欲しい」
理由も告げず、ただ頭を下げる夫を、私は空っぽな感情で見つめるしかできなかった。
何て言うべきか。
「わかった。別れよう」
は、普通すぎ?
「知ってたよ、真美ちゃんのこと」
は、怖すぎ?
いつかこうなることを分かっていながら、
対策できてなかった自分に腹が立ってきた。
ーー夫、真史さんとは27歳で結婚して今年で5年になる。
友達の友達として紹介され、真面目で誠実、彼女いない歴イコール年齢の彼が当時の私には刺さったのだ。
結婚するならこういう人がいい。
初めて会った瞬間からそう思った。
絶対に裏切らない人。
親は不倫が原因で離婚していることもあり、
私の結婚の条件はただ一つだった。
付き合い始めてちょうど1年後には籍を入れた。
真史さんの仕事はエンジニアであり、定時出社、定時退社が基本だ。
仕事が終わったらまっすぐ家に帰り、いつも同じ時間に寝る。
日曜日の朝、教会に行き、その後図書館により、何冊か本を借りて夕方には帰ってくる。
技術系の本ばかりで、私が読めそうな本はない。
そんな平凡な日常に変化があったのは、真史さんの会社に真美ちゃんが入社してから2週間後のことだった。
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