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出会い
運命、がなにかは知らないけれど。
命を繫いだ運、と捉えるならば
間違いなく運命の本だろう。
小学校2年生になるタイミングで、転校した。
いや、させられた。
それまでよりは田舎に引っ越した。
俯いてぼそぼそ話す、自分達より都会から来た転校生は、今まで「自分が一番」と思っていた子には
「ウザい」の一択だったろう。
更に担任の教師が放った一言が追い打ちをかけた。
「●●から来たんだから、おまえらなんか直ぐに追い抜かれるぞ。」
はぁ、調子のんな、と思っただろう。
あたしが言ったわけではないけれど。
さらに転校初日に、ちょっとキラキラしたお気に入りの新品の消しゴムが、無くなった。
帰りの会の直前に気付いて、あれ?と探していると
「どうした?」
と担任が聞いたのでバカ正直に答えた。
そのあとの展開など、思いもよらずに。
「持ち物検査をする。カバンの中の物、全部出せ。」
へ?なんで?
思いつつ、自分も全部出す。筆箱の中身まで。
やっぱり、ない。
近くの席の女の子の、カバンのファスナーつきポケットの中から、あたしの消しゴムは出てきた。
「やっぱりか」
と有無を言わさず担任は叱りつけ、その子は泣いた。
あたしは、犯人探しをして欲しかったんじゃない。
どんなのかを、あたしから話を聞いて
みんなに声をかけて、こんなの見なかったかい?
拾って、届けようとして忘れてた、とかないかい?
間違って自分の荷物に紛れてないか、見てくれるかい?
もし名乗り出たら、よく言えたね、と認めたり
怪しいと感じたら、そっと傍で様子を見たり声をかけてみたり
そんな風にできなかったもんか、と、今なら思う。
あたしなら、そうしてあげたい、と。
別の話になってしまったが。
まあ、常習犯だったのだろう。
「アイツがチクったせいだ。転校生のクセに。」
「都会から来たからって調子こいてむかつく。」
学校のこと教えてあげる、と言われ、何も考えずひょこひょこ付いていったあたしは、
特別学級がある旧校舎のトイレに閉じ込められた。
特別学級専用の外から鍵がかけられるトイレがあったのだ。
「調子こいてるからだ、ざま見ろ」
井の中の蛙のなかのバクテリアみたいなボスザルと
その取り巻きの下劣な笑い声を聞きながら
最初は扉を叩いて助けを呼んでいた。
寒くて、疲れて、なんかどうでもよくなって
声を出さずに泣いていたら
「なした?こんなとこで?」
用務員さんが扉を開けてくれた。
なした、と言いつつ、何かをわかっていたようだった。
この用務員さんとは中学卒業までの八年間のお付き合いとなり
とんでもないスーパー用務員だったのだが
それはまた 別の話。
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