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声を聞かせて②
五十鈴とは毎日メールをしているが、仕事中は忙しくてなかなかチェックできない。
今日も残業だったので、スマホをろくに確認しないまま遅い帰宅をした。
くたくたに疲れていたので、とりあえず冷凍庫からアイスを取って食べる。
アイスの甘さで、少し元気が出てきた。
ソファーに座ってスマホを開くと、五十鈴からメッセージが届いていた。
「ん?」
SNSのアプリを開くと、見慣れない記号が目に入る。が、すぐにボイスメッセージだと気づいた。
「五十鈴、送ってくれたのか!」
嬉しくなって、マジマジと眺めた。
チャット画面をよく見ると、ボイスメッセージは二回届いていた。
最初のは三秒だし、「間違えた」と書いてあるので、操作を間違ったのだろう。
五十鈴はデジタル機器の操作があまり得意ではない。
それでも、俺の為に送ってくれたのだ。
五十鈴の気持ちが嬉しくて、顔がにやけてしまう。
ウキウキしながら、さっそくボイスメッセージを再生した。
『こ、これでいいかな? んーと、あ、将? 五十鈴です。えっと……何しゃべるんだっけ?』
五十鈴の可愛い声と、アタフタした様子が可愛らしく、その様子が目に浮かぶようだ。
音声は短いが、懸命にしゃべってるのが分かる。
「はぁ……マジで可愛いな」
何度か再生して、五十鈴の声を堪能する。
音声が短いので、すぐ終わってしまうのが惜しい。
でも、頑張ってくれたのだと思うと、すごく嬉しかった。
俺も、お返しに五十鈴へボイスメッセージを吹き込む。
「五十鈴、ただいま。メッセージありがとな。すっげぇ嬉しかった。五十鈴の声を聞くと、頑張れるよ。いつもありがとう……おやすみ」
もっと長く話そうと思ったが、言葉が思いつかなくて、そこで終わってしまった。
「俺も、五十鈴のことは言えないな……」
苦笑して、スマホを置いた。
疲れのせいで頭が回らないのもあるが、最初だし、これくらいで良いだろう。
ボイスメッセージを送り合うのは初めてだが、短くても、五十鈴の声を聞けるのはすごく良い。
もっと早くお願いすれば良かったな。
あの、半年会えなかった期間に、これを思いつかなかった自分が情けない。
だけど、これからは、五十鈴の声をたくさん聞けるようになるはずだ。
それを楽しみにして、五十鈴にお休みスタンプを送った。
(終)
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