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おかえり、テディ
教会の鐘が鳴る。花鈴は夫の敏と並んで花嫁に拍手を贈っていた。
『おめでとう! 卯月!! エドワード!!』
今日は花鈴と敏夫婦の娘の結婚式だった。西海岸のカラッとした青空の下、新しいカップルに人々が祝福を贈っている。
『ええと。ここでわがマザー・イン・ロウを紹介したいと思います! 彼女は日本の絵本をたくさん英訳し、幼い子ども達の中に温かい日本のイメージを与えてくれました。
かく言う僕も彼女の翻訳した『咲と迷子のテディ』の絵本を読み、日本に憧れを抱き、なんと日本人の女性と結婚することになりました!!
僕は卯月を尊敬し愛しています。ですが、自分に日本への憧れを持たせてくれた女性の家族になる、その神の巡り合わせにもすごく感謝しています!!』
エドワードがそう言うと、卯月が手紙を取り出した。日本式に花嫁から両親への手紙かと思いきや、それは花嫁花婿二人からの花鈴に対する感謝状だった。
花鈴がたくさんの絵本を訳したこと。それによって英語圏の子ども達に日本に親しみを持つ機会を与えたこと。花鈴が関わった絵本を読んだ子ども達の代表として、彼らは手紙を読む。その手紙が終わると、花鈴に向けて大きな拍手が贈られた。
ーテディの乗った飛行機は、空港に降り立ちました。帰国ゲートの前に咲ちゃんとお父さんとお母さんが待っています。
テディは空港の職員さんに連れられて、パスポートに帰りのスタンプを押してもらい、ゲートを潜りました。ー
ーテディが覚えているより、少しだけ大きくなっていた咲ちゃんがテディに駆け寄りますー
『……Teddy! Teddy! Teddy!……』
『ねえ、グランマ。これボクの本だ!!』
久しぶりに日本に来た赤毛の孫は、そう言って緑色の瞳を輝かせ、花鈴が大事にしていた『咲と迷子のテディ』の本を差し出した。
『セオドア、あなたの本?』
『だってこれ、ボクと同じテディって名前のぬいぐるみが冒険する話でしょ? でもこれ、日本語だ!』
『そうね。日本語ね』
『グランマ。これ読んでよ! 日本語で!!』
『あら? 日本語わかるの?』
『うん、ちょっとだけね。ボク、日本語も上手くなりたいから……』
孫の言葉に、花鈴は微笑んだ。
ー……そして、テディは咲ちゃんのところに帰ってきました。おかえり! テディ!!ー
<おしまい>
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