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「それで、出頭してきた犯人……モローとかいう名前だったっけ。そいつはどんな男だったの。やっぱり元軍人だったり?」 「いえ。私ともたいして歳の違わない若い男でした。昨日隊長も言っていた通り、『ウォレン兄弟』に入ってまだ二年も経っていない下っ端のようです」 「やっぱりどう考えても身代わりじゃない……それか使い捨ての鉄砲玉か。それであちらの幹部は偉そうにふんぞり返ったまんまってわけ?」  本当に腹が立つ。しかしこの世界の人間に『鉄砲玉』なんて言っても通じないか。しかしワッツはその言葉に突っ込むことはなく、悔しげに「……はい」と頷くだけだった。 「それを覆すだけの材料がなくては、上を説得することもできません。とはいえ、肝心の現場も片付けられてしまっては……」  まあ、確かにそれは残念である。しかし現場検証は念入りにしていたようだし、今さら新しい材料も出ないだろう。血液や遺伝子の検査もできないこの世界ではなおさらだ。ならば、また別の視点から攻めればいい。 「オハラ隊長たちは、この前の賊の残党捜しに戻ったのよね?」 「はい。と言っても逃亡中なのはごく数名で、主犯格はほぼ確保しているようですけどね。犯人グループの全貌もあらかた見えてきているようで」 「そいつらの件が、この殺人事件とも絡んでるってことはないの?」  ワッツが弾かれたようにわたしに目を向けた。その目は心底意外そうで、そんなことは考えてもいなかったようだった。 「その、この前モルガン商会に押し入った賊ってどんなグループだったの?」 「貧民街でたむろしている十代の少年たちで構成されたグループだそうです。リーダーはガルシアという名の十九歳の男で、これまでにも二度、暴力沙汰で短い強制労働を経験している札付きだとか」  いかにもな街の不良グループというわけか。しかし今回彼らが起こした事件は、そうしたよくある暴力事件とは性質が違う。 「そんなグループが、どうしていきなり商会の倉庫なんて襲撃したのかしら。そんなところを襲っても、盗品を売り捌くルートがなければ無駄骨かもしれないのに」  それに、捕縛を逃れた残党が何日も逃げ続けていられるのも奇妙だ。背後に彼らの逃走を組織的に援けている存在があるのは明らかだ。 「まだ確かなことは言えませんが、ボールドウィン領を根城にしている大きな組織が背後にいるとも見られています。数ヶ月前から、怪しい男の目撃情報がたびたび寄せられていまして、中には各地で手配されているヴォロヴィッツという男に関するものもありました」
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