3.聖なる夜に。

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 負傷した兵士達の戦線離脱と強制送還の知らせを受けたのは、寒さに凍え始めた日の朝だった。雨が静かに降っていた。 『怪我の酷い兵士への特別処置です。故に、道中または送還後の生死の約束はできません』 『 ……喜んでも、いいのか? わたしは罰せられないだろうか』 『僕は知らんぷりが得意です。それに、こうして雨も降っている。しまうのも当然でしょうね』  国務官から青い封筒と同時に手に握らされたのは一枚の紙切れで、それは……きみの手記だった。 『一緒になっておれは幸せになれる自信はあるけれど、おれにあの子を幸せにできる自信なんてない』  手記についた血の跡がきみのものなのか、それとも紙切れを忍ばせてくれた誰かなのかは知らない。  きみの字を見た瞬間に不安より嬉しさが胸を占めた。きみらしい勝手な一文に、止めどなく文句と涙が溢れた。 * * *  ベッドに横たわった一人の負傷兵は、天井を見上げているようで闇を見ているかのようだった。  脚は片側が千切れているようだ。毛布の上に置かれた手の指も本数が合わない。  それでも生きて……。  生きて、きみは目の前にいた……。 「ユイベール?」  きみの名を呼ぶ。  一歩、二歩、近寄る足音がきみにも届く。  一度目は何気なく、二度目は驚いて。  視線を動かしたきみの目元と口元が、ふわっと柔らかく綻ぶのがわかった。
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