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「……やあ。久しぶりだね、フィナ。おれじゃない"誰か"は、どうしたの?」
勝手なことばかり言うのは三年前と同じだ。
「神は、わたしを独りぼっちにしていたよ」
「……。フィナは、おれの天使でいてくれたんだね」
笑顔を繕うきみの瞳は翳っていた。
身体からも心からも"喪失した自信"が、きみに深く深く重傷を負わせているのが一目でわかった。
傷を負って血が流れるのは肉体だけではない。
心からも流れる。
戦争で失うものだって、肉体だけじゃすまされない。
同様に"心"も失うんだ。
ーー喪失したものを取り戻すにはどうすれば?
無力と自信のなさが、きみの手記と重なった。
ああ、そうか……と思う。
だから"勝手に"ならざるを得ないんだ。
「一緒になってわたしは幸せになれる自信はあるけど、わたしにきみを幸せにできる自信をくれはしないか?」
身勝手なキスをした。
ここに紙も筆もないから、こうするしかなかった。
きみが勝手なことばかり言うのは、叶わない切望でも願望でも"勝手"なら赦されるからだ。それなら、わたしだって勝手なキスをしても赦される。
「うっ……くっ……」
きみは、わたしの前で初めて泣いた。
* * *
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