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Report1
里へ戻ったねえさんは、帷子を着て泣いている。
足が痛いと泣いていて、袖も涙で濡れている。
怖い顔した旦那さん、棒を振り振り追い回す。
大きな声で怒鳴っては、ねえさんのこと追い回す。
夢に出てきたねえさんは、真っ赤な草履を履いている。
真っ赤な草履はどうして赤い、ねえさんの血が染みたから。
真っ赤な草履はどうして赤い、ねえさんの血が染みたから。
またあの歌だ。
またあの歌が、息子の、健壱の口から耳へと流れ込み、じわじわ責めるように頭の中へ満ちていく。
もうすぐ3歳になろうとしているにも関わらず、健壱はろくに言葉を話せないし、ああ、うう、ぐらいしか口にしない。通販で購入した子供用教材や絵本、動画などで誘って、少しでも覚えさせようとすれば嫌がって逃げる。
時にはひきつけを起こし、なだめるだけで疲れてしまう。
通っている保育園でも心配されて、相談センターや病院を紹介された。
そんなはずはない、と否定したいこちらの気持ちを見透かされたようになって恥ずかしく、無言で会釈だけをし、逃げるようにして帰った。
問題は、言葉だけではない。
認めたくないが、小学校へ行けるかどうかも不安になってくる。
保育園では、いまだにトイレがきちんとできないため、しばしば粗相してしまうがゆえに、他の園児から「赤ちゃんみたい」と馬鹿にされ、笑われることもあるようだ。
そのせいで、いつしか登園もしぶるようになって、さらに頭が痛い。
子を持つ大人にとって、これほど都合悪く、面倒なことはない。
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