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アルワーレスの誘いを断る理由もなく、起龍達はそのまま船中での食事を楽しんだ。
食事の後、ダミアンは純安を訪ねると言って大村の別宅へと向かった。
八月の強い日差しの下でも丘を舐める風が大地の熱を奪ってゆく。セミの鳴き声を運ぶ風に背中を押されながらダミアンが屋敷の門を潜ると、裏庭から規則正しく何かを打ちつける音と共に、純安の気合いの声が聴こえた。
ダミアンはその声がする方へと足を運んだ。そこでは、袴だけを履いた純安が、藁を巻いた丸太を木刀で打ち込んでいた。
「ダミアン殿。また最近は鍛錬をさぼっておられるようですな」
純安は木刀を振るう手を止めることなく言った。
「これでも暇を見つけて鍛えているつもりなのですが……。戦の方はどうですか?」
純安はやっと大きく息を吐いて木刀をだらりと下げた。
「そこに座りましょう」
そう言って縁側へと腰を下ろし、手拭いで汗を拭うと、純忠が置かれた現状について話し始めた。
「御館様は有馬の殿の方へ行っている頃です。しかし、悩んでおられる」
「悩んでいるとは?」
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