第四章・業火の海 第二話

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「デウスの教えは確かに正しい。仏の偶像を破壊しても災いなど起こらない。御館様はそれを証明して見せたが、時期が悪かったのかもしれぬと。龍造寺との戦よりもそちらが気になっているご様子。後藤の家臣に加え、奥方の態度も近頃おかしい」  純安は教会堂の方に目をやって、そこから聞こえる子供達の声に耳を傾けた。 「貴明殿ご本人はどうなのです?」 「分かりませぬ。貴明殿の居城である武雄は龍造寺に近い。目前まで攻められ、そちらで手一杯のご様子。ただ……大殿の位牌を焼いたのには流石に……」 「そうでしょうね。貴明殿にとっては実父だ」 「皆に説教を聞かせてからでも良かったのではないかと儂も思う。仏僧共に誑かされたままの者の前で仏像を木切れにし、位牌を香の代わりに焼いては、デウスの教えを広めるに障害となったかもしれぬと」 「それでその悩みを打ち込みで振り切ろうと?」  ダミアンに純安は笑った。 「そのようですな。過ぎたことを考えても仕方がない。分かってはいるが、もっと力になれたのではないかと。ダミアン殿はアルメー殿と諸国を見て来ておいでだ。やはりどこも同じか?」
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