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「此度は必ずや純安が伴天連を連れて帰ろう。純忠も警戒しておる。しくじれば二度目はありませぬぞ」
「心得ております」
貞治は声が震えぬように話すのが精一杯だった。フロイスに計画を漏らしたことが目の前の浄印に知れたらどうなるか分からない。横瀬浦奉行という肩書は、後藤家と手を組む浄印に対しては何の意味も持たないのだ。
「安心してその時をお待ちください」
食事を終え、浄印が城から出て行くまで貞治の額には汗が絶えず滲んでいた。
「くそっ、生臭坊主が……。おい、面高を呼べ!」
貞治はすっかり冷めた飯を掻き込みながら、家臣に命じた。
八月十四日。聖母被昇天の祝日を翌日に控えても、トルレスの容体は良くならなかった。加えて、フロイスまでも不調を訴え始めた。
「フロイス様、ここはフェルナンデスとサンシェスに任せてお休みになられた方がよろしいかと」
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