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フロイスの言う通り、横瀬浦はこれまでで最高の賑わいを見せていた。南蛮船と商船が入り江を埋め尽くし、街には人が入り乱れている。この街で洗礼を受けたキリシタンに至っては、その数二千を超えていた。
これだけのキリシタンを無視し、満足に働ける修道士の一人でも連れ帰れば、キリシタン達からも反発されかねない。
純安が横瀬浦に来てもう四日目になる。純忠を待たせるのは限界だろう。純安は、この日の夕刻まで待っても駄目ならば、ここは一度諦めて再度指示を仰ぐべきと考えを決めた。
そして日暮れまで待っても二人の容体は好転せず、横瀬浦を発つ前にダミアンを訪ねて、今富城へ一旦戻ると告げた。
「それでは、これから城に戻るのですか?」
「ああ。本当なら司祭を連れて戻りたかったが……致し方あるまい」
「日が暮れてからとは珍しいですね」
この時代、船を出すのはほぼ日中と限られていた。
「面高の話によると潮が良くないらしい。なに、慣れた船路。心配はご無用」
激流の伊ノ浦瀬戸さえ越えれば、大村までは穏やかな海だ。ダミアンの顔にも心配の色は見えない。
「船まで見送ろう」
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