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純安とダミアンに続いて、起龍もそう言って港へと歩いた。
今富城へ向かう船団は、四艘が既に沖へと出ていた。
「純安殿、世話になった」
起龍がそう言って右手を差し出す。これまでになく改まった様子の起龍に首を傾げながらも、それを純安が握り返した。
「またいつでも城に来られても良いではないか。貴方がたとあればいつでも歓迎しますぞ」
そう言って純安が最後の一艘に乗船すると、船団の中央へと入り、大村へと櫓を漕ぎだした。
船団の影が小さくなるまで、起龍は微動だにせず船の行く先を見つめていた。ダミアンがその起龍と船団を交互に見ている。
「起龍殿、純安殿の身に何か?」
ただならぬ気配にそう尋ねたダミアンに、起龍の視線は純安が乗る船に向けられたまま動かない。
「貞治に殺される」
「馬鹿な!」
「……そうか。ダミアンには話していなかったな。俺はこれから起こることを知っている」
「それは、あのアハシュエロスとかいう奴から聞いた話ですか?」
「違う。アハシュエロスはこの世のあらゆる時代を彷徨う。そして、そのアハシュエロスとは俺のことだ」
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