第四章・業火の海 第二話

23/24
前へ
/410ページ
次へ
 純安とダミアンに続いて、起龍もそう言って港へと歩いた。  今富城へ向かう船団は、四艘が既に沖へと出ていた。 「純安殿、世話になった」  起龍がそう言って右手を差し出す。これまでになく改まった様子の起龍に首を傾げながらも、それを純安が握り返した。 「またいつでも城に来られても良いではないか。貴方がたとあればいつでも歓迎しますぞ」  そう言って純安が最後の一艘に乗船すると、船団の中央へと入り、大村へと櫓を漕ぎだした。  船団の影が小さくなるまで、起龍は微動だにせず船の行く先を見つめていた。ダミアンがその起龍と船団を交互に見ている。 「起龍殿、純安殿の身に何か?」  ただならぬ気配にそう尋ねたダミアンに、起龍の視線は純安が乗る船に向けられたまま動かない。 「貞治に殺される」 「馬鹿な!」 「……そうか。ダミアンには話していなかったな。俺はこれから起こることを知っている」 「それは、あのアハシュエロスとかいう奴から聞いた話ですか?」 「違う。アハシュエロスはこの世のあらゆる時代を彷徨う。そして、そのアハシュエロスとは俺のことだ」
/410ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加