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どっちを選ぶ。
勝巳の自分に対する質問は、暗に雅人への覚悟を問う。雅人が応えられずに小さく震えていると、ふっと破顔して宥めるように両腕で抱き寄せて、胸の内へ巻き込んだ。
「俺は泣いて縋って執着して、天使の背に生えた翼を手折って、毟って、二度とどこにもいかないように、攫って縛って閉じ込めてしまうかも」
「は、犯罪……だ」
「そう。だから俺をワルモノにしたくなかったら、君の方から堕ちておいでよ。こんな風に俺の腕の中へ。今だけじゃなくて、ずっと。そしたら俺は優しく優しく、君を一生大事にするから」
「脅迫だ」
「違う、告白。好きだよ」
「嘘」
「本当。嘘だったらハリセンボン、飲ませてもいい」
「………………………………水族館にいるやつで。生で食べさせますよ」
「絵面がおもしろいなあ。いいよ」
「……いいんだ……」
絶句する雅人に勝巳はあははとまた笑う。
雅人はその笑いにほっとして、強ばっていた体からゆっくりと力を抜いていき、代わりに勝巳の背に回した手にきゅっと力を入れた。
終
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