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「目、節穴じゃないですか?」 「恋、しちゃったのよ、俺」 「僕、男ですよ」 「知ってる」 「股間にあんたと同じモノがついてるんですよ!」 「興味ある。どんなんついてんのかな、とか、気持ちよくなって思わず漏らしちゃったりするのかな、とか」  未経験の衝撃があばたをえくぼに変えているという自覚は勝巳にもうっすらある。だから何度も気のせいだと、違うのだと、意識の端から追い出そうとした。  けれどももう知ってしまったせいで次から次へと興味がわいてくる。同じ学校で、同じ時間帯で動いているその時に、雅人はどこでどうしているだろうか。そうやって気にしていると同じ学校という生活空間の中で雅人の姿が何度も目に入るようになった。  家に帰るとなおさら私生活が気になった。勝巳が十四才だった当時などイヤラシい動画が落ちていないかネットで探し回って、夜な夜な悶々と蓄積する煮えた欲望を一人で発散していたものだ。雅人もそんな夜を過ごすのだろうか。あの強烈で痛烈で正義に満ち満ちた主張を語ったあの口が、快楽に吐息を、かわいく押し殺していた嬌声を思わず小さく漏らしたりするのだろうか。ずっと考えてしまう。  ある日の夜、勝巳は夢の中で天使を堕天させた。  朝、下着がぐっしょりと濡れていた。自分の管理を外れて吐き出された青臭い欲望の証だ。夢の中の天使が雅人の顔をしていた事を思い出して、勝巳は自分の陥っている状況を確信した。  眼鏡で、デブで、チビで、運動音痴で、オタクで、陰キャ。雅人自身も的確に表現したその人物像に勝巳は片思いをしている。  それまで女に不自由したことがなかったから、自分でもどうかしていると思いながら、どうしたらいいのかわからなかった。だが誰に相談してもその相手を「素敵だね」と共感してくれはしない。気の迷いだと一蹴される。雅人本人にすら、だ。
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