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「僕のどこがいいんですか?」
窓際の席に座った佐野雅人は尋ねた。
大きく開かれた窓の外からかけ声が聞こえてくる。野球部が肌を真っ黒にして新人戦に向けて練習に励んでいるのだ。暑さは盛りを過ぎたというのに太陽の光は強い。白い日除けのカーテンを揺らす風だけが、季節相応の涼しさと甘さを運んでくる。
雅人が手元の宿題から目を離すこともなく尋ねた相手は机の前、窓枠に軽く腰掛けるようにもたれて立っている男だ。百八十センチ以上の長身と子供の成長過程を完了した体格は胸元を緩めたネクタイ式の学生服姿を熟れたビジネスマン姿に見せる。
安達勝巳という。雅人の兄雅美の友人だった。
二人は同じ豊原学園に通っている。
カソリック系の中高一貫校で、少子化とジェンダーレスが叫ばれる昨今には珍しい男子校だ。雅美と勝巳はその高等部二年生で、雅人は中等部に今年入ったばかりの一年生だった。
理科室、パソコンルーム、美術室、音楽室、体育館など特別教室を共用にしているため、学舎こそ隣り合っていて一階の渡り廊下で繋がっている。だが原則高等部と中等部の間で物理的な交流は禁止されていた。男子特有のマウントの取り合いで、暴力沙汰が起きるのを避けるためだ。
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