泡沫(うたかた)と海鳴りの星

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 ノールの調整する装備を得てからというもの、おれは格段に空想物質(ソムニウム)を採掘できる回数と量を増やせるようになった。  親方の伝手で、採掘師とその専属技師を束ねて仕事の調整や補助なんかを行ってくれる組合(ギルド)と、そこと繋がりのある中でも比較的良心的な引き取り先とも契約を結べた後はさらに暮らしも良くなった。  そりゃあ下働きに比べたら仕事は厳しくて辛いと感じる事も増えていたけれど、それだってやりがいのうちだ。  そうして、親方やノールのお師匠さんの助けも借りつつ、組合(ギルド)とも連携を取れるようになって、おれたちは何とか二人でやっていけるまでに成長した。  大きな進展があったのは、チームを組んでから二年が過ぎた辺りだったか。 「他のチームが掘り残して放棄したところとか、探れずに放置したあたりは粗方探り終えたってところか」  ノールの工房。休憩室を兼ねたコンソールルームの一角。  チームを組んだ記念に二人で買ったソファに並んで腰掛けて、頭を突き合わせて、時に機嫌良く、時に真剣に、次に採掘へ向かう区域を絞る。  その頃仕事仲間に、お前達は距離が近い、とか言われてたところは否めない。  でもまだその時は、仕事以上に特別な何かがあるという関係ではなかった。それはそのままで居心地は良かった気はしていたけど。そうでもなくなったのも、確かこの頃だ。
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